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2006年1月25日 (水)

『隣の家の少女』

Dainさんの「わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」の劇薬小説企画で評判だった『隣の家の少女』を読了。
すごかった。読後感が大変に悪い。
でも実を言うと、読んでいて気持ちよかった。ニヤニヤした。

以降ネタバレします。あと、虐待とかキッツい描写があるかもなので、厭な人はやめといてください。

文章版スナッフフィルム。[snuff film 〔俗〕 (殺人に性的興奮を覚える購入者用の)殺人実写ポルノ(映画)。EXCEED 英和辞典]」
『スタンド・バイ・ミー』と同じく、社会的に成功した「わたし」が思春期の頃のある事件を思い出す形式で話は進みます。『スタンド〜』における事件とは「森の中への死体探し」ですが、本書では「隣家に養子としてやってきた美少女の虐待死」。

小川で偶然出会った美少女メグ(15歳)。彼女に12歳だった「わたし」は、彼女にそれとは気付かない恋心を抱きます。

が、実は彼女は何の落ち度もないにも関わらず隣家の母子に虐待されていたのです。その現場に「わたし」は招かれる。そして「わたし」は、嫌悪感や恐怖を覚え「助けたい」と思ってるのに、制止も参加もせずに見ているのです。今まで見た事のないような美少女が、地下室に監禁されて、両腕を吊られて、集団で殴打されて、目の前で妹を折檻されて、強姦されて、切られて、犬の糞を食わされて、煙草の火を押し付けられて、熱湯を浴びせられて、焼き印を押されて、陰部に灼いた鉄棒を当てられるのをただ見ている。最初は昂然としていた彼女がじっと堪えるようになり、遂に無反応になっていくのを見ている。
終わりの方でようやく「わたし」は傍観者であるのを止め、メグを救おうとします。が、失敗して監禁され、自らの傷を引っ掻き回し、爪の剥がれた手で地面を掘る壊れた彼女を見せられるはめに。
文章だけじゃ、という方はみかんRの「Kiss Me」(『親愛なる大人達へ』所収)を見るとイメージしやすいと思います。父親が娘を犯しながら「愛してる」と煙草の火を押し付けたりします。焼き切れた乳首が糸引きながら落っこちます。ひええ。

こんな陰惨な小説を読んでいて何故気持ちよかったのかと言うと、「フラジリティ」、「壊され穢され喪われるにつれて逆に輝きを増す美しさ」をひしひしと感じたからです。
Fragilityの元となる"fragile"は「気をつけて扱わないと壊れてしまう様」(Merriam Webster's Dicionary of Synonyms)。そういった繊細で華奢で美しい「代え難い宝物」だからこそめちゃくちゃに壊したくなりますよね。メグが虐待される様を読んでいると、その昏い法悦感で背中がゾクゾクしたのです。
美しい蝶から羽を毟り取って蟻の群に放り込む時。
「青いとんぼをきりきりと / 夏の雪駄で蹈みつぶす」時(北原白秋「青いとんぼ」)。
ゼルエルを食べる初号機を見た時。
気持ち悪かったですか?むしろ気持ちよかったですよね?ね?
まるで犠牲者の美質を自分の中に転移させる儀式です。まあ初号機の場合はそのまんまS2機関を取り込んだ訳ですが。

私が感じていたこの悦びが、作中の「わたし」もどこかで感じていたからこそ「嫌だ嫌だ」と思いながら視続けていたのではないかなー。憧れの美少女を永遠に独占できるんですから。

と、そんな感想を抱きました。

ちなみに、吉田良の人形写真集『Articulated Doll -解体人形-』も同じ方向性を感じます。縛られ、裸に剥かれ、バラバラに解体され、雪中に埋められて、火にくべられ、罅が入りいながら、美しさを全く喪わない球体関節の少女人形。一旦壊れたら再生しない人間とはひと味違った抽象的な美しさにメロメロ。

『ロリータ』だって「喪われて輝く美しさ」を感じさせます。オッサンが少女に手を出すエロ小説ではないのです。妄想が回りくどく暴走する第一部もいいのですが、どこぞのDQNの子を宿しやつれ果てた17歳のドロレス(ロリータ)に出会った時のハンバートの述懐こそが『ロリータ』最大の見せ場。

たとえ彼女の目が近眼の魚の目のように濁り、その愛らしい、みずみずしい、やわらかなビロードの三角洲が、汚らしく引きちぎれ、乳首が大きくふくれてひび割れようと、そんな事は問題ではない−ロリータよ、それでもなお私は、おまえの青ざめた愛らしい顔を一目見るだけで、おまえのしわがれた若やいだ声を一度聞くだけで、いとしさに気も狂わんばかりになるだろう。

私はこのくだり、涙無しには読めません。

というわけで、『隣の家の少女』は人を選びますがかなりおすすめです。『オンリー・チャイルド』も楽しみだなー。

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コメント

あう、読まれたのですね…トラックバックどうもです。「スゴ本」の中の人です。
最悪な読後(快)感を味わえたようで、オススメしたかいもあったというものです。「オンリー・チャイルド」もご期待を裏切らないと確信しとります。
そして、これを超える作品で思い当たるものがあれば、オススメいただけると幸甚です。

投稿: Dain | 2006年1月26日 (木) 23:04

素敵な本を紹介して下さってありがとうございます。
これまで縁がなかったジャンルの本で、世界が広がった感じがしています。

本書を超える作品ですか…確かになかなかなさそう…。
J. ビリング『児童性愛者』は読後感の酷さの絶対値は『隣の家の少女』といい勝負でしたが…

投稿: cyclolith | 2006年1月27日 (金) 04:28

初めまして、内容はあまり思い出したくないので触れませんが、私も「隣の家の少女」を読みました。憂鬱な気分から未だに開放されません(笑)でも最近の読後感0小説よりずっとインパクトがあったので読んでよかったと思います。
英語のサイトで調べたら、(もう知っていらっしゃるかもしれませんが)これは去年に映画化されていたそうですね。
でも実際見るのはリアルすぎて無理ですから、サイトで予告編だけみました。メグ役の子がいまいちそれっぽくなく赤毛ではなかったのを除いては、結構イメージ通りでした。スーザンがそれなりに年でしたがかなり可愛く、日本のロリコンの人がうなりそうな感じでした。

投稿: | 2008年3月20日 (木) 18:27

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